創部100周年記念ページ 管弦楽団第61回定期演奏会選曲インタビュー

ブログ 2022年5月16日
左より楽事委員長、部報委員長

5月29日(日)にすみだトリフォニーホールで行われる「創部100周年記念 学習院輔仁会音楽部管弦楽団第61回定期演奏会」に向けて、選曲インタビューを行いました。
オーケストラの定期演奏会では様々なプログラム構成がありますが、今回の演奏会は前曲・中曲・メイン曲と、3曲のプログラムで成り立っております。
今回選んだ3曲にはある共通点があるようで...?
選曲の動機を探るべく、当部パンフレット制作を行っている部報委員長の岡本茉子が、音楽のことをすべて取りまとめている楽事委員長(兼学生指揮者)の本田千遥にインタビュー!
どうぞ最後までご覧ください。


岡本)本日は、5月29日に開催される音楽部管弦楽団春定に向けて、楽事委員長の本田千遥さんにインタビューしたいと思います。宜しくお願いします。

本田)宜しくお願いいたします。

岡本)今回のプログラムはフランス出身の作曲家によって構成されていますよね。その事に初めて気付いた時、管弦楽団楽事会議※の皆さんがとても考えて選曲なさったんだなと感じました。まず、このようなプログラム構成に至った経緯を教えて頂きたいです。

※楽事委員長、管弦楽団責任者、会計委員長、セクションリーダー、パートリーダー、ライブラリアンで構成される会議。指揮者選考、選曲会議などを行っている。

本田)はい。私たちは大学の部活のオーケストラなので、学生主体で進めていく中で、出演する楽器の数など様々な条件と共に、“学生がやりたい曲”という視点で曲を選ぶのではないかと思います。今回は、やりたい曲という視点だけではなく、それから一歩踏み込んだプログラムとしての統一感や、演奏会としての完成度、お客さんの事を考えて選曲をしていきました。メイン曲、中曲、前曲と順番に選んでいくんですけど、メイン曲が決まってから、どのようなプログラム構成にしていくかという事について重点をおいて考えていきました。

岡本)ではまず、メイン曲である、サン=サーンスのオルガン付きが今回選曲されましたが、サン=サーンスの曲の中でも、これを選んだ理由を教えていただきたいです。

本田)はい。サン=サーンスは交響曲を5曲遺しているんですけれども、その中で一番の成功作と言われているのがこのオルガン付き、交響曲第3番になっています。
この曲はサン=サーンスの交響曲の集大成というだけあって、細かい構造に工夫が凝らされています。また、更にピアノやオルガンが入っていて、とても華やかな曲になっているので、100周年にぴったりなのではないかと考えました。オルガン付きを初めて聴いた時、曲の緩急の付け方や、華やかな音色に衝撃を受けました。今まで聴いた管弦楽曲のイメージを覆されましたね。

岡本)私も初めてこの曲の音源を聴いた時、パイプオルガンの天から降ってくるような優しい音色、そして豪華な音色には驚かされました。本番でのパイプオルガンとの共演、とても楽しみですね!

創部100周年記念 学習院音楽部管弦楽団第61回定期演奏会 フライヤーより

岡本)次に中プロである《アルルの女》、これは言わずと知れた名曲ですが、なぜこの曲を選曲したのですか。

本田)《アルルの女》の作曲をしたビゼーは、昨年の秋の演奏会の中曲で演奏した《カルメン》と同じですね。続けて同じメンバーが同じ作曲家の曲を演奏する事で、何か理解が深まるものがあると思います。また、アルルの女は誰もが知っている曲なので、演奏会に来てくださるお客様に、“凄い、この曲知ってる!”とか“聞いてみたい!”という気持ちをもって聴いて頂けたらなと思いました。

岡本)私も昨年の《カルメン》に引き続き、今年の《アルルの女》にも乗っていて、実際に演奏してみると、2曲の間にはビゼーを表すような、何か特徴があるように感じたのですが...

本田)歌劇について理解を深めるのも面白いですよね。ストーリーの展開も波乱があり...是非詳細はプログラムの曲目解説をご覧ください!

岡本)そうですね、どちらも歌劇なんですよね。そして、どちらも“悪女(ファムファタール)”が登場しますよね。

本田)悪女で、バッドエンドで終わる事もあり、凄く盛り上がります。

岡本)どちらも歌劇で、悪女に翻弄され、バッドエンドで終わる。主人公の“死”という結末を迎えるまでの壮大な物語と音楽の構成が、ビゼーの2曲の間に存在する共通した特徴であると言えそうですね。

岡本)最後に、前プロである古風なメヌエットについてです。私は今回初めてこの曲を知ったのですが、実際にチェロで演奏してみて、“素晴らしい音楽に出会えたな”って感じたんですけれども、これを選曲した理由を教えて頂けたらなと思います。

本田)こちらは、他の候補曲としてはH. ベルリオーズの《ローマの謝肉祭》が挙がっていたんですよね。その為、知名度的にも、ラヴェルの《古風なメヌエット》は知らない人が多い事から選ばれるとは思っておらず、僅差で決まった時は凄く驚きました。しかしこの曲は元々ピアノの曲で、ラヴェルの初期作品なんですよね。皆さんの知っているような「ダフニスとクロエ」や「亡き王女のためのパヴァーヌ」というような「ラヴェルの曲」とは違う印象と言ったら良いのでしょうか。知らなかった曲と出会い、その魅力に気付いて“この曲がやりたい”と思ってくれた人が多かったのが嬉しかったですし、プログラム構成にこだわったやりがいを感じました。

岡本)私も今回この曲の魅力に気付けた一人です(笑)。合奏練習でも様々な気付きがありましたよね。

本田)難しいようで単純そうだったり、単純そうで難しかったり、やはり音楽の奥深さを感じる作品でした。

岡本)一音一音の繋がりである弦や管と違って、ピアノはハーモニーに重点を置いた楽器なのではないでしょうか。一つの楽器で様々なパートを弾けるという点は、ギターやピアノが“小さなオーケストラ”と呼ばれるゆえんですよね。また、弦や管は一音を長く鳴らし続ける事ができるのに対して、ピアノは楽器の性質上、一音をポンと鳴らすだけでは消えてしまいます。音を途切れさせないためには、止まらずにずっと弾き続けなければなりませんよね。緻密な構成によって音楽が作られ、また止まらずに弾き続けるという点こそ、ピアノ曲であった《古風なメヌエット》が精巧なスイスの時計と例えられる理由と言えそうですね。

本田)フランスの作曲家を選んだというのが凄く大きな特徴となっているんですけれど、フランス近代の作曲家それぞれの苦悩があって、その中で音楽が作られたのだと凄く思いました。特にサンサーンスは、たくさんのフランスの作曲家がいる中で評価されるのが厳しい時代にいたのではないかと思います(こちらも詳しくは演奏会パンフレットをご覧ください)。オーケストラを始めるまで、サンサーンス交響曲第3番を知らなかったのですが、「やりたい曲」と言われてもピンとこなかった私にとって、出会えて良かったという曲です。本番当日どんな演奏になるかは、選んだ私たちの力にかかっているなと思っているので、これから残りの期間で音楽の本質に向き合い完成していけたらいいなと思っています。

岡本)ありがとうございます。今回は演奏会のパンフレットに“曲目解説”というページを作っているんですけれども、今日インタビュー受けてくれた楽事委員長の千遥ちゃんにも、解説原稿を執筆して頂いています。確か専門的な図書館にまで赴いてくれたんですよね。なんていう図書館でしたっけ。

本田)前任の先輩に勧めていただき、所蔵の多い国立国会図書館という所に行きました。

岡本)凄いですよね。執筆のためにそこまで赴いてくれたのが本当に嬉しいです。このインタビューを読んでくださっている皆様も、是非今回の演奏にいらして、パンフレットを読んで頂けたらなと思います(笑)。

では、今日は大変興味深い素敵なお話、本当にありがとうございました。春定も一緒に頑張りましょう!

写真撮影:楽事補佐 伊藤光祐

創部100周年記念 管弦楽団第61回定期演奏会
2022年5月29日(日)14時開演。すみだトリフォニーホール大ホール。指揮:阿部未来、オルガン:石丸由佳。サン=サーンス/交響曲第3番ほか。The 100th Anniversary: 61st Regular Concert of Gakushuin Music Society Orchestra.

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