第50回卒業演奏会曲目解説

ブログ 2023年3月3日

皆さまこんにちは!学習院輔仁会音楽部です。

私たちの第50回卒業演奏会は、合唱・管弦楽・そして合同演奏とバラエティに富んだ全15曲でボリュームたっぷりにお届けします!

コロナ禍を経て、完全な形で卒業演奏会を開催するのは実に3年ぶりとなりました。4年間の音楽部生活の最後に「これがやりたい!」という気持ちを詰め込んだプログラムは当部の卒業演奏会ならでは。

このページでは各楽曲の解説文をご紹介します。執筆者の個性があらわれているかも?ぜひお読みください!


ペリのファンファーレ

作曲:デュカス

舞踏劇「ラ・ペリ」は、不老不死の花を求める王子イスカンダルと、その花を持つ妖精ペリにまつわる物語である。ファンファーレは舞踏劇のはじまりの曲であり、しばしばコンサートや式典で単独演奏されている。編成は通常のオーケストラの金管楽器セクションと同じ4Hr, 3Tp, 3Tb, Tubaであるが、今日は金管セクション全員で演奏する。

作曲したポール・デュカスは1865年にフランスで生まれた。代表作の「魔法使いの弟子」は、卒業する4年生が最初に乗った定期演奏会でも演奏した。卒業演奏会も同じデュカスで幕を開ける。

文責:トランペット4年 山田陽大

女声合唱とピアノのための「良寛相聞」より「君や忘る道」

作詞:良寛、作曲:千原英喜

この曲は、禅僧の良寛とその弟子の貞心尼のやりとりを題材につくられた「良寛相聞」という曲集のうちの一つです。最近顔を見せに来ない弟子に対して「ここに来る迄の道を忘れてしまったのか?待てど暮らせど全く来る気配がない。もし嫌じゃなければまた訪ねてほしい。」と言っています。

これを侘しさと捉えるか、恋心と感じるか、人によって解釈が異なるのも合唱のおもしろい所だなと感じます。神秘的で、どこか懐かしさを感じるような雰囲気をどうぞお楽しみください。

文責:アルト4年 田辺莉沙

群青

作詞:福島県南相馬市立小高中学校平成24年度卒業生(構成・小田美樹)、作曲:小田美樹、編曲:信長貴富

「卒業演奏会で歌うならこれ!」とずっと前から心に決めていた一曲です。どうしても歌いたくておねだりしてしまいました(笑)

この曲は、当時東日本大震災によって離ればなれになってしまった子供達のつぶやきを、小田先生がつなぎ合わせてできた歌詞になっています。

新型コロナウィルスによって閉塞的な学生生活を送ってきた私たちにもリンクする部分が多くあり、実感を伴った"うた"をお届けできると思いました。心の奥がジンと熱くなるような感動を、会場一体となって共有できるよう心を込めて歌います。

文責:アルト4年 田辺莉沙

瑠璃色の地球/斎太郎節

作詞:松本隆、作曲:平井夏美、編曲:三沢治美/宮城県民謡、編曲:竹花秀昭

あげよ、いざ盃を我が友に、幸あれ!みなさん、ごきげんよう。男声合唱団指揮者の鈴木です。我々男声合唱団は発声方法の改善に取り組んでいて、芯を持った、まろやかな声質を開発しています。

そんな我々が歌うのは「瑠璃色の地球」と「斎太郎節」になります。「瑠璃色の地球」は松田聖子さんの曲で、穏やかな曲調で地球という星の美しさを歌います。「斎太郎節」は宮城県の民謡で、大漁を祝う歌になります。穏やかな曲も、熱い曲も魂込めて歌い上げる男声に注目していただけると幸いです。

文責:テノール4年 鈴木公康

心の瞳

作詞:荒木とよひさ、作曲:三木たかし、編曲:鈴木公康

「上を向いて歩こう」「幸せなら手をたたこう」などのヒットソングを歌った坂本九さんの曲です。1986年に合唱曲として初めて編曲され、主に中学や高校で歌い継がれるようになりました。しかしそれゆえいつの間にかこの曲には「子供向けの曲…」というイメージが付いてしまいました。

そこで今回この曲を編曲するにあたり、和声進行から伴奏まで全てを見直すところから始めました。ゼロから書き起こしていくのは大変ではありましたが、演奏会の一翼を担えるよう全力を尽くしました。我々、混声合唱団の演奏を楽しんでいただけると幸いです。

文責:テノール4年 鈴木公康

青春譜

作詞:五木寛之、作曲:信長貴富

第75回NHK全国音楽コンクール 高校の部の課題曲として作曲されました。作詞は五木寛之、作曲は信長貴富です。

冒頭部は重厚感がありますが、時には伸びやかな曲調に、時には激しく荒々しい曲調へと変化していく様は、青春時代という多感な時期の心情の変化を表しているように感じます。青春時代の複雑な心情を丁寧に歌い上げます。皆様の青春時代を思い起こさせるような演奏ができれば幸いです。

文責:アルト4年 川嶋美穂

混声合唱とピアノのための「くちびるに歌を」より「くちびるに歌を」

作詞:フライシュレン、訳:信長貴富、作曲:信長貴富

ツェーザー・フライシュレンによる詩 “Hab Sonne in Herzen”(心に太陽を持て)を基に作曲されました。作曲家 信長貴富はこの詩から受けたインスピレーションを音像に変換し、詩を再編、そして「くちびるに歌を―Hab’ ein Lied auf den Lippen―」が生まれました。ドイツ語と日本語の2か国によるテキストが特徴的です。ドイツ語によってロマンティックな音像を、母国語によって懐深くの情感を呼び覚ますことが狙いとされています。

私達はコロナ禍で難しい状況の中、合唱活動を行ってまいりました。そのため、「どのような状況であろうとくちびるに歌を持て」というこの曲は私達に通じるものがあると感じます。歌の大切さを、そして素晴らしさを2か国語でお届けします。

文責:アルト4年 川嶋美穂

トロンボーン協奏曲

作曲:リムスキー=コルサコフ

この曲は、1877年にロシアの海軍軍楽隊で指揮者を務めていたニコライ・リムスキー=コルサコフによって、海軍士官の同僚であるトロンボーン奏者レオノフのために作曲された曲です。第1楽章:Allegro Vivace、第2楽章:Andante Cantabile、第3楽章:Allegro Allegrettoからなる3つの短い楽章で構成されていて、第2楽章と第3楽章にはソリストのためのcadenzaが用意されています。

初演は1878年3月で、クロンシュタットの海軍基地にて同じく吹奏楽伴奏による管楽器のための協奏曲である「オーボエと吹奏楽のためのグリンカの主題による変奏曲 ト短調」「クラリネットと吹奏楽のためのコンツェルトシュトゥック 変ホ長調」とともに作曲者自らの指揮で演奏されました。その後一時は忘れられていましたが、1951年にソ連国内で再発見されてからはトロンボーン協奏曲の名曲として幅広く演奏されています。

金管伴奏やピアノ伴奏など様々な編曲が存在しているこの曲ですが、今回は原曲通り吹奏楽伴奏でお送り致します。

文責:トロンボーン4年 河村智史

スペイン交響曲より第1楽章

作曲:ラロ

フランスの作曲家エドゥアール・ラロ(1823-1892)は、1874年に稀代のヴァイオリニスト、パブロ・デ・サラサ ーテ(1844-1908)に《スペイン交響曲》を捧げた。翌年、サラサーテの初演により絶賛を博し、ラロの名声が確立した。この曲に刺激を受け、チャイコフスキーがヴァイオリン協奏曲を作曲したということはよく知られている。

「スペイン」というのは、ラロがスペイン系の血を引くから、サラサーテの祖国だから、流行していたエキゾティシズムにのっとったからなどといわれている。 実質的にはヴァイオリン協奏曲であるが、スケルツォや間奏曲を含む5楽章で書かれていること、独奏ヴァイオリンが管弦楽部とよく融け合っていることから「交響曲」としたとも言われている。

第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ

ニ短調、2/2拍子。ソナタ形式。絢爛とした技巧が随所に現れ、異国情緒にみちた独特の魅力に溢れている。

文責:ヴァイオリン4年 八木佐枝子

ヴァイオリン協奏曲第3番より第3楽章

作曲:サン=サーンス

この協奏曲は、サン=サーンスが書いた「序奏とロンド・カプリチオーソ」や「ハバネラ」と並んで多く演奏される協奏曲である。カデンツァ風のヴァイオリン独奏とオーケストラの対話のような序奏で始まり、明るく活き活きとした主題、伸びやかな主題、コラール風の静かな主題の3つの主題を経て、最後はロ短調のフィナーレで幕を閉じる。

私自身、オーケストラと一緒にコンチェルトを演奏する機会は最初で最後だと思っているので全力で楽しんで演奏できるよう頑張ります。

文責;ヴァイオリン4年 関矢雄太

喜歌劇「天国と地獄」より序曲

作曲:オッフェンバック

「天国と地獄」はオッフェンバックによって作曲された喜歌劇である。本来のタイトルは「地獄のオルフェ」という。物語はギリシャ神話の「オルフェとエウリディーチェ」のパロディで、離婚寸前の夫婦が地獄で出会い現世に帰還しようとする物語である。この序曲はオッフェンバック自身の手で作曲されたものではなく、1860年のウィーン上演の際にカール・ビンダーという音楽家の手によって劇中の旋律を用いて編纂されたものである。

快活な導入部の後に、クラリネット、オーボエ、チェロ、ヴァイオリンのソロが登場し、最後はカンカンと呼ばれるギャロップで締めくくられる。

文責:ヴァイオリン4年 関矢雄太

SF交響ファンタジー第1番

作曲:伊福部昭

伊福部昭は、映画音楽の巨匠として知られる。映画『銀嶺の果て』ではじめて映画音楽を手がけて以来、300本を超える様々な映画の音楽を手がけてきた。その中でもとりわけ有名なのが、『ゴジラ』をはじめとするSF特撮怪獣映画の音楽である。

SF交響ファンタジー第1番では、伊福部が手がけたSF特撮怪獣映画音楽のうち『ゴジラ』『キングコング対ゴジラ』『宇宙大戦争』『フランケンシュタイン対地低怪獣』『三大怪獣 地球最大の決戦』『怪獣総進撃』の6つの映画からその音楽が採られている。

冒頭では、「ゴジラの動機」と間奏部を経て、誰しも聞き覚えのある『ゴジラ』のタイトルテーマが流れる。また、伊福部怪獣映画音楽ではマーチが多用されその特徴となっているが、彼は現実の戦争を想起させないよう、マーチでは金管楽器ではなく弦楽器を前面に押し出し、変拍子を多用して手拍子をしにくくしたという。通称「伊福部マーチ」である。本曲でも、『怪獣総進撃』のマーチとしてこれを垣間見ることができる。どこで登場するか、ぜひご注目いただきたい。

フルート4年 丹羽龍之介

交響曲第8番より第4楽章

作曲:ドヴォルザーク

ドヴォルザークは《交響曲第8番》について、「新しい方式で算出された個性的な楽想をもつ、他の交響曲とは違った作品」と述べた。古典的なソナタ形式の伝統に従いつつも、意外性や自由さが垣間見える作品で、スラヴ民族の精神性や情熱、魂が強くこめられているのである。

本演奏会では4楽章を演奏する。トランペットによるファンファーレで始まり、遠ざかるように消えると、チェロによる民族風な第1主題が現れる。落ち着いた調子で各楽器が役割を変えつつ数回変奏すると、次は勇ましく、速く変奏される。軽快なフルートソロの反復進行が音楽を勢いづけ、ハ短調のジプシー風で原始的な第2主題が登場する。この主題をもとに変奏が次々に騒然と繰り広げられ、短い展開部の変奏が終わるとト長調の強烈な和音。導入のファンファーレがもう一度鳴るのを合図に、再現部に入る。穏やかなまま変奏が行われたのち、輝かしく彩飾され、スピード感を持ったまま終わる。

文責:クラリネット4年 石川未夕

フィンランディア

作曲:シベリウス

19世紀初期のフィンランド戦争以降、ロシアの支配下にあったフィンランドは民族運動の高まりを見せる。シベリウスは《フィンランディア》において、特定の描写や民謡などは用いていないが、故郷の大自然はシベリウスの創作の源であったに違いない。

この曲は、大きく三部形式になっており、金管楽器による重々しい序奏で幕を開ける。このモチーフを木管楽器と弦楽器が受け継ぎ、民衆の悲嘆を表すような旋律が奏でられ、次第に激しく盛り上がり、印象的なリズムのファンファーレが打ち鳴らされる。次に、弦楽器の上昇音型が沸き起こり、ティンパニと金管楽器の低音から闘争の呼びかけを力強く奏でるのをきっかけに主部に入る。それから勝利へ向かうモチーフに移り、賛歌風の旋律が歌われる。そして再び闘争と勝利のモチーフが現れ、金管楽器に合唱も加わり、堂々と終わる。

フィンランド人が故郷を思う気持ちに、4年間を過ごした音楽部での思い出をどこか投影せずにはいられない。

文責:クラリネット4年 石川未夕

フィンランディア 歌詞対訳

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